投資の羅針盤ホーム

独自の視点と着眼点から投資環境を分析します

投資を通じて社会を学び、
より良い社会を目指す

不動産投資信託

  1. 仕組み
  2. 投資法人の設立
  3. 資産保管会社
  4. 一般事務受託者
  5. 分配金
  6. コストとリスク
  7. 資産の評価
  8. 投資主総会
  9. 投資主の権利
  10. 投資尺度
  11. 不動産種類ごとの特徴
  12. 銘柄ごとの利回り格差要因
  13. スポンサーとの利益相反


1.仕組み

日本において不動産投資信託は、2000年の投信法改正により設立可能となりました。投資信託には、「契約型」と「会社型」があります。日本における不動産投資信託は私が知る限り、「会社型」が主流です。(不動産投信に投資する投資信託(ファンド・オブ・ファンズ)は除きます。)

会社型不動産投資信託では、資産運用を目的とする投資法人を設立し、投資法人が発行する投資口を投資家に販売します。集めた資金の運用は投資法人から運用を委託された投資信託委託業者が行うこととなります。
また、不動産投信はその資産の運用により、「特化型」と「分散型(総合型・複合型)」に区分されます。

特化型では、特定の用途の不動産をメインに運用することとなります。たとえば、オフィスビルへの特化型、ホテルへの特化型、ショッピングモールへの特化型、居住用不動産への特化型等があります。一方、分散型では運用対象を特定せず、さまざまな用途の不動産を組み合わせて運用します。

理論的には、特化型よりも分散型のほうがリスクが低いと考えられますので、利回りも低くなるのが通常だと思われます。

2.投資法人の設立

投資法人を設立するには設立企画人が規約を作成しなければなりません。規約とは会社の定款にあたるもので次にような事項が記載されることになります。

・決算期
・目的、商号、発行する投資口の総口数
・設立時に発行する投資口の発行価額および口数
・資産運用の対象および方針
・金銭の分配の方針
・運用会社への報酬
・一般事務受託者、投資信託委託業者、資産保管会社

投資法人の商号には必ず「投資法人」の文字を入れなければなりません。また、設立にあたっては規約等の必要書類を金融庁に提出して届出をしなければなりません。そして、届出が受理されると規約が有効となります。その後、設立の登記を経て、投資法人が成立することとなります。

投資法人は株式会社の株式に相当する投資口を発行します。投資家は投資口の金額を限度とする有限責任を負うこととなります。

3.資産保管会社

不動産投資法人には法人格が与えられ、役員会は置かれますが使用人の雇用はできず、自ら業務を行うことができません。よって、投資判断はもとより、取得した不動産の保管についても他者に委託する必要があります。

投資法人の委託を受けて資産の保管業務を行う法人を資産保管会社といいます。通常は信託銀行が資産保管会社となるようです。具体的な資産保管業務としては、不動産の権利書等の保管が主な業務となります。

資産保管会社は、投資法人の資産と自己の資産とを分別管理しなければなりません。

4.一般事務受託者

不動産投資法人は、その資産の運用に関しては投資信託委託業者に委託します。また、資産の保管に関する業務は資産保管会社に委託します。そして、その他の業務に関しては一般事務受託者に委託することとなります。それでは、一般事務受託者にはどんな業務を委託するのでしょうか。

一般事務受託者が受託する主な業務には以下のようなものがあります。

・発行する投資口の募集に関する事務
・発行する投資口の名義書換に関する事務
・不動産投資法人の運営に関する事務
・不動産投資法人の計算に関する事務
・金銭の分配または払戻に関する事務
・会計帳簿の作成に関する事務
・納税に関する事務

これらの業務は投資信託委託業者や資産保管会社に重ねて委託することも可能です。

5.分配金

不動産投資法人は、資金を運用して得た利益を投資家に分配します。分配金には2種類があります。

一つは、利益の分配にあたるもので、不動産から得られる賃貸料や売却益から費用を引いた部分をいいます。

もう一つは利益を超えた額の分配です。不動産投資法人は上記の利益に加え、不動産の減価償却費を原資として分配することが可能となっています。

しかしながら、減価償却費の全てを分配してしまいますと、不動産に対する将来の修繕費や維持費を捻出できなくなってしまう恐れがあることから、減価償却費相当額の60%までが分配可能となっています。安定的な分配をするために減価償却費を活用して調整しているケースが多いようです。

なお、不動産投資法人は利益の90%超を分配することで、その利益は損金とされ、法人税が課されないこととなっており、株式の配当金のように、法人税を取られた後に所得税が課されるといった二重課税が発生しないようになっています。二重課税が発生しないことから、株式の配当と違い、配当控除の適用はありません。

6.コストとリスク

不動産投信を購入したり、保有したりすることにより発生するコストには以下のようなものがあります。

・売買手数料

不動産投信は、証券会社を介して証券取引所で買う必要があります。その際に証券会社に買付にかかる手数料を支払う必要があります。手数料の額は証券会社ごとに異なります。対面型の証券会社よりもネット証券のほうが手数料コストは断然安くなります。有名どころとしては、SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券あたりでしょうか。どこで買うかよりも何を買うかが重要であることは言うまでもありません。また売る際にも手数料がかかります。

・税金

不動産投信を保有することで得られる分配金には税金がかかります。また売却益にも税金がかかります。税金の取扱いは上場株式とほぼ同じです。

・運用会社、資産保管会社、一般事務会社等への委託報酬

マリモ地方創生リート投資法人(3470)を例に見てみましょう。平成29年12月期の総資産約190億円に対し、年間の資産運用報酬が約1.4億円弱、資産保管費用240万円、一般事務委託手数料が約0.2億円で、合計約1.5億円といったところです。年率換算で、総資産に占める比率は0.8%弱となっています。

・投資法人の維持・運営費用

同じく、マリモ地方創生リート投資法人(3470)を例に見てみましょう。平成29年の年間で、賃貸事業費用が約6.2億円、役員報酬が480万円、公租公課が約1,400万円となっています。役員報酬は思ったよりもかなり少ないのですね。なお、約190億円の総資産で得られた平成29年の年間営業収益は約15億円となっており、総資産営業利益率は約7.8%となっています。

続いて、不動産投資信託を保有することによるリスクを考えてみましょう。主なリスクは以下のとおりです。

・不動産特有のリスク

賃貸料の変動リスク、空室率の変動リスク、災害リスク、物件の劣化リスク、物件の流動性リスクなどがあります。

・有価証券としてのリスク

証券取引所での流動性リスク、価格変動リスクなどがあります。

・運用に関するリスク

借入金の金利変動リスクなどがあります。借入金の比率が高い銘柄は金利の変動に収益が大きく左右されます。

7.資産の評価

不動産の価値は、景気動向や人口動態、金利の変動、周辺環境の変化、建物の劣化などのさまざまな影響を受け、時々刻々と変化していきますね。購入した不動産投信の不動産についても同じことです。時間の経過とともに変化する不動産の価値を毎期、適正に評価してくれないと投資家は安心して投資できません。ここでは、不動産の評価について考えてみましょう。

不動産投信が保有する不動産、土地の賃借権、地上権等の評価をする場合、以下の方法があります。

(1)不動産鑑定士の評価にもとづくもの
(2)近隣の類似物件の取引事例にもとづくもの
(3)収益還元法による計算にもとづくもの
(4)同じ物件を再度調達した場合に想定される額を減価修正したもの
(5)上記(1)から(4)を組み合わせたもの

不動産投資信託では、約款または規約において、上記(1)から(5)の中から適当と考えられる方法を定めるものとされています。

近年においては、(3)の収益還元法による評価が重視されているようです。以前、不動産投信における不動産評価の妥当性が問題になったことがあったと記憶しています。投資家にとっては恣意的な評価がなされていないかが心配なところですね。適切な評価がなされないと、不動産投信市場への信頼が揺らぎ、資金が逃避してしまいますから。

8.投資主総会

不動産投資法人の最高意思決定機関は投資主総会です。株式会社における株主総会のようなものです。株主総会との違いはその開催頻度です。株主総会は毎決算期ごとに行う必要がありますが、不動産投資法人の場合は少なくとも2年に1回、投資主総会を行う必要があります。役員の任期が2年であり、役員の選任は投資主総会によらねばならないためです。

投資主総会での専決事項には以下のようなものがあります。

ア.投資法人規約の変更
イ.合併契約書の承認
ウ.投資法人の解散
エ.役員、会計監査人の選任
オ.運用会社との委託契約の締結または解約の承認

などです。上記のア~ウのような重要な事項については、発行済投資口総数の過半数の投資主が出席し、2/3以上の議決権をもって決議されます(特別決議)。

9.投資主の権利

不動産投資法人の投資主の持ちうる権利として、経済的な利益を受ける権利と経営・支配に関する権利があります。

経済的な利益を受ける権利として、投資主は保有する投資口数に応じて金銭の分配を受ける権利があります。また、不動産投資法人が解散して清算される場合、投資主は投資口数に応じて残余財産の分配を受ける権利があります。

経営・支配に関する権利としては、投資主は投資口数に応じた議決権を投資主総会で行使することができます。また、会計帳簿や書類の閲覧、謄写をすることができる帳簿閲覧権があります。

その他、主な権利として、役員の違法行為差止請求権、新投資口発行無効訴権などがあります。

10.投資尺度

不動産投資信託への投資を行う上で参考となる指標のうち、代表的な指標について紹介してみます。

(1)NAV倍率

不動産の時価に基づく不動産投資法人の純資産価格をNAV(Net Asset Value)といいます。さらに、投資口価格を、投資口数1口あたりのNAVで割ったものをNAV倍率といいます。株式投資におけるPBRの概念に近いものです。NAV倍率が1倍を超えると不動産投信の実際の価値よりも市場での価格が高いと考えることができます。ただし、不動産の評価が正当になされていることが大前提です。

2018年3月現在、NAV倍率は0.8倍~1.2倍の間にほとんどの銘柄が収まっています。

(2)分配金利回り

1口あたりの年間の予想分配金を投資口価格で割って算出します。株式投信における配当利回りの考え方と同様です。2018年3月現在、分配金利回りは3.5%~6.0%の間にほとんどの銘柄が収まっています。

(3)NOI利回り

NOI(Net Operating Income)とは不動産の賃料収入などで得られる収益から、不動産管理運営にかかる費用や空室による損失を引いた純営業収益のことをいい、実質的な収益をあらわしています。NOI利回りは、NOIを物件の取得原価で割ることで求められ、投下資本に対する収益の割合をあらわしています。

(4)LTV(Loan To Value)

総資産に占める有利子負債の比率を表します(有利子負債/総資産)。LTVが高いほど高いレバレッジをかけていることで金利変動の影響を受けやすくなります。

2018年3月現在、LTVは30%~50%くらいの間にほとんどの銘柄が収まっています。

11.不動産種類ごとの特徴

一口に不動産といっても、その種類ごとに一定の特徴があるため、その特徴を知りつつ分散投資をしたほうがリスクを抑えてリターンを大きくすることができます。

ここでは各種不動産ごとの特徴をまとめておきましょう。

【オフィスビル】
・景気の影響を受けやすい。
・テナントが抜けることも多く収益の安定性に欠ける。

【住居(レジデンス)】
・景気の影響を受けにくい。
・入居率が100%となることはまず無いが入居者の分散度が大きいため、収益の安定性が高い。

【商業施設(ショッピングモール)】
・景気の影響を受けやすい。
・住居のように簡単に入室者が見つからないので入居テナントの撤退リスクが大きい。

【物流施設】
・景気の変動を受けにくい。
・安定性が高いが、商業施設同様、テナントの撤去のリスクが大きい。

【ホテル】
・景気の影響を受けやすい。
・季節の変化や自然災害等により需給バランスが左右される。

景気変動の影響を受けやすい不動産投信と受けにくい不動産投信とに分散投資しておけば、景気拡大期のメリットを享受しつつ、景気後退期のデメリットを打ち消すことが可能となりますので、そのバランスを考えて投資しておく必要があります。

12.銘柄ごとの利回り格差要因

日本には約60銘柄のJリートが証券取引所に上場しています。日本の不動産に投資をしているのですから、多少の違いはあっても、そんなに分配金利回りは変わらないと考えるのが普通ではないでしょうか。

しかし、実際には利回りが6%を超すものから、3%ちょっとのものまであり、銘柄によってかなりの差があります。この差は一体何によって生じているのでしょうか?

利回りの低い銘柄の3つと高い銘柄3つを比較してその要因を探ってみたいと思います。

■低利回り銘柄のサンプル

・ジャパンリアルエステイト投資法人 (8952)
・日本ビルファンド投資法人 (8951)
・三井不動産ロジスティクスパーク投資法人 (3471)

■高利回り銘柄のサンプル

・マリモ地方創生リート投資法人(3470)
・インヴィンシブル投資法人 (8963)
・投資法人みらい (3476)

検証するにあたり、いくつかの視点を挙げておきたいと思います。

・時価総額
・流動性
・上場の時期
・運用資産の種類
・物件数
・運用資産の地域
・格付け
・スポンサーの知名度

比較しやすいよう、表にまとめてみました。

特徴的と考えた箇所を網掛けしてみました。利回りが低い(人気がある)銘柄の特徴として、以下の4点を挙げたいと思います。

(1)格付けが高い
(2)スポンサーの知名度が高い
(3)歴史(実績)がある
(4)時価総額が大きい

端的にいえば安心感がある銘柄ということになります。銀行や投資信託などの機関投資家がJリートを購入するとなると、購入金額が大きくなるので、流動性が高くなければならないし、格付けが高く、知名度がないと上役の許可も出ないということでしょう。

しかし、個人投資家にとっては多少リスクが高くても、高利回り銘柄で分散投資したほうがJリートの魅力を享受できるものと考えます。市場は効率的ではなく歪みが生じるものですが、Jリート市場においても歪みが発生しており、その歪みを利用しない手はないと思います。

13.スポンサーとの利益相反

不動産投資法人の設立では一般的に、不動産会社、金融機関、商社などがスポンサーとなります。

スポンサーは、不動産投資法人の証券取引所への上場などにおいて主導的な役割を果たすほか、上場後も不動産投資法人の運営をサポートし、運用する不動産の取得や運用等に関しても主導的な役割を果たします。

またスポンサーは、不動産投資法人が取得する不動産の供給者となることが多く、法人設立時にまとめて物件を譲渡するなど大きな役割を果たします。

ここでスポンサーと不動産投資法人との間に利益相反が発生することには留意が必要です。スポンサーにとっては、不動産を高い価格で譲渡すれば利益になり、一方で、不動産投資信託の投資家にとっては、安い価格で取得すれば利益になるという関係からです。

もちろん、利益相反が適切に管理され、不動産の取得価格が適正なものとなるよう、取得価格や投資判断の透明性を維持するためのさまざまな仕組が導入されていますが、投資家もチェックを行って、投資主としてのけん制機能を果たしていく必要があります。

利益相反への取り組みに対する簡単なチェックとして、スポンサーが不動産投資法人にどの程度出資しているかを見ておくといいかもしれません。スポンサーが出資しているということは、投資家と利害が一致していることになるからです。

inserted by FC2 system